オートモーティブ、産業、インフラ、
IoTの領域で未来を作っていくルネサス。
実際にどのような開発やソリューション提供が行われているか、ご紹介します。
自動運転 (AD) /先進運転支援 (ADAS) での取り込みが進むと考え、ルネサスでは次世代の車載用途SoC (System on a chip) 「RCarシリーズSoC」技術開発を進めてきました。カーナビゲーションシステム、スマートカメラシステムといった車載用途のSoCとして、また、高い画像処理性能を有するSoCとして幅広く採用されています。
車載SoCである「R-Car」は、ナビやグラフィックメータ、動画再生、画像認識など、さまざまなアプリケーションを同時実行し、それをいくつものディスプレイに表示できる性能があります。このポテンシャルを世の中に伝えるためのデモシステムを開発しました。「エンドユーザー (運転者) が必要とする情報を、適切な時に、わかりやすい形で提供する」ことをコンセプトに、SoCだけでなく、そのSoCの性能を最大限に引き出すソフトウェアおよび開発環境を提案しています。
ルネサス独自のAIアクセラレータ「DRP-AI」。このベースとなるのが、アレー上に配置された演算ユニット間の接続を動的に切り替えながらCNNなどのニューラルネットワークを実行可能な、DRP (Dynamically Reconfigurable Processor) 技術です。演算処理の実行効率を向上できるため、電力を圧倒的に低く抑えることができます。
ルネサスでは、カメラやネットワークを含むシステムボードを開発し、AIアプリケーションがすぐに搭載可能な形態にて顧客に提案しています。もちろん自ら性能動作の検証も行っています。このように、企業導入がよりスムーズに進むようにしています。
スマートスピーカーの普及に伴い、グローバル市場でも音声認識による機器操作ソリューションの認知が向上してきました。一方で、クラウド (インターネット) への接続を前提としたシステムは、リアルタイム応答性の不足、プライバシーの安全面、通信量増加などの懸念点も出てきました。
ルネサスでは、2019年入社の若手社員が社内サポートを受けながらインターネットに接続しない音声認識ソリューションを展開しており、高性能かつ低価格のソリューションとして評価を得ています。
自動運転では数々のセンサから入力される膨大な情報から次の操作に必要な情報を瞬時に決定しなければなりません。これには大量の認識処理演算が求められるため発熱も大きく、これまでのソリューションでは水冷・液冷といった冷却システムと車体への実装に特別なケアが必要であったため、実装される場所も限定されていました。
今回ルネサスが実現した認識エンジンは、高い電力効率が特徴です。この認識処理SoCが採用されることで、自動運転などの大規模な認識処理でも一般のプロセッサと同等の空冷で実装が可能になりました。また、処理の軽いスマートカメラ的アプリケーションではファンレスといった選択肢も見えてきます。これにより、採用いただく自動車でのコックピットデザインの自由度が向上します。
一方で、「安心・安全」を実現するには、自身の故障を自ら検出してシステムに通知する仕組みが必要です。このために、演算と同時に検算を実行し確認を行います。過剰に検算すると電力が無駄になる半面、必要な検算を省くことは絶対に避けなければなりません。どの箇所でどのような方式で検算を行うのが効率的なのか、これを判断できる技術力も、長年車載半導体を開発してきたルネサスの強みです。
高性能かつ高い機能安全要求を、高い電力効率を保ちながら実現することは難しい課題です。徹底して無駄を省くため、「無駄な待機時間を削減できる方式」を考え、「必要十分な故障検出ができる検算方式」を実装しました。これは、初期段階からさまざまな知見を持つ設計者が議論を重ね、開発してきたからこそ実現できた成果です。自動運転/先進運転支援が加速している昨今、ルネサスのソリューションに大きな期待が寄せられています。
『車載SoCである「R-Car」のポテンシャルをどう世の中に伝えるか』を出発点としたのが本プロジェクトです。そのために、プレスリリースや各種展示会などで見ていただくデモシステムを開発しました。
ハードウェアとしては、「R-Car」の評価ボード、表示機器 (LCD) 、操作機器 (タッチパネルやセンサ) 、画像入力 (カメラ) を準備します。その上で動作するアプリケーションソフトウェアまで開発しています。さらに、キャンバスデモ (※1) 、次世代表示・HMIデモ (※2) 、バックライト制御・色管理デモなどを開発しました。
「R-Car」には複数アプリケーションを低消費電力で実行するための独自開発IP (※3) とバスシステムが搭載されています。これにより、ナビや動画再生といったインフォテイメント (※4) と、グラフィックメータやADASといったより安全が重視されるアプリケーションを、それぞれが阻害されることなく、しかも同時に実行することができます。
複数のデモを開発しましたが、コンセプトは一貫して「運転者が必要とする情報を、適切なときに、わかりやすい形で提供する」ことです。今後の車内環境において運転者はあふれる情報の中から必要なものを探すことがストレスになるだろう、という仮説をもとに、エンドユーザー視点からシステムレベルでの提案を行いました。
このように、ルネサスではSoCだけでなく、その性能を最大限に引き出すソフトウェアや開発環境の提供に力を入れています。今回のプロジェクトのように、自動車メーカーからフィードバックをもらい、将来の自動車の姿などを直接議論できるようになったことは大きな収穫でした。この経験を、今後のコネクテッドカー時代に向けた次世代製品の開発に生かしていきます。
ルネサスが独自に開発したAIアクセラレータ (人工知能アプリケーションを高速化するために設計された特殊なコンピュータシステム) 「DRP-AI」は、高速なAI推論と圧倒的な低消費電力を両立しています。
DRP (Dynamically Reconfigurable Processor) とは、ソフトウェアの柔軟さとハードウェアの高速性を兼ね備えたプログラマブルハードウェアのことです。「DRP-AI」を内蔵したMPU「RZ/V2M」では、組込み機器で課題となる低消費電力化を実現し、放熱対策が容易となります。これにより、機器の小型化が可能となりました。
数年前から開発を進めていたこの技術ですが、高性能・低消費電力にもかかわらず、その独自性ゆえに、導入したい企業にとっては「使いづらい」というネックがありました。
それを解消するために、ルネサスでは顧客が簡単に使用可能となる「DRP-AIトランスレータ」というツールを準備しました。
このツールにより、導入を検討する企業が「すぐに使える」技術になりました。その結果、監視セキュリティ、リテール、OA、産業オートメーション、ロボティクス、医療・ヘルスケアなど、幅広い組込み市場のビジョンAIアプリケーションとして、製品への展開が加速しています。
すでにさまざまな製品に搭載されている音声認識ですが、スマートスピーカーのようなクラウド (インターネット) への接続が前提のシステムは、リアルタイム応答性の不足やプライバシー侵害の安全面、クラウドとのデータやりとりによる通信量増加などが課題となっていました。
そこに着目したルネサスでは、チームメンバーに若手の社員も抜擢し「Voice Recognition Solution」プロジェクトを始動しました。
インターネット接続が不要な音声認識 (エッジ音声認識) ソリューションを準備しており、従来製品との差別化や高機能化を実現することができます。
プロジェクトメンバーの2019年入社社員
「音声認識技術を持つパートナー探しにはじまり、そのソフトをルネサスのMCUで動作させる専用音声認識ミドルウェアも開発しました。さまざまな環境音の中では人間の声の波形認識が重要なポイントになりますが、家電分野で広く採用されているルネサスの知見を活用し、評価ツールも用意しました。顧客企業に応じた提案やアドバイスも行い、高性能かつ低コストソリューションとして採用されるようになっています。
また、ソリューション提供に向けたボードやサンプルプログラムの準備はもちろん、グローバル展開の強みを生かし、各地域言語に適した提案とサポートが可能となっています。私自身、拡販のための紹介資料・技術資料やWebページの作成を行うなど、上司やチームのサポートを受けながら、全体を通してプロジェクトの進行に携わっています。」